シンデレラLOVERS
日菜琉視点
この前のクリスマスのイルミネーションを見に行ってから、善雅くんは少し雰囲気が変わったと思う。
「……ごちそーさま」
「お粗末様です」
今まで何も言わずに返されていたお弁当箱を、返してくれるときに一言付け足してくれるようになった。
その言葉を聞くのがわたしは嬉しくて、毎日頬が緩んでしまう。
バレたら恥ずかしいな。
なんて、こんな幸せな心配をしてるわたしがいる。
そして、もう一個。
「サッカー部がんばってるね」
「試合前らしいしな」
外は寒いからって……待ち合わせ場所が、門の外から靴箱に変わった。
善雅くんの気遣いは嬉しかったけど……。
わたしと並んで歩くの恥ずかしくない?
何度となく聞きたくなってしまうのを堪えながら、わたしは善雅くんの隣に並んで歩いている。
だからわたしは、並んで運動場を横切るたびにドキドキしてしまう。
釣り合ってないって、誰かに言われてしまうんじゃないかって……。
「善雅くんは部活しないの?」
「めんどいし。日菜琉は?」
「わたし? わたしは……タイミング逃しちゃって」
善雅くん。
アナタの名前をわたしがこんな風に呼んじゃって良いのかな。
善雅くんと交わされる穏やかな会話の裏で、わたしには小さな不安がいつもこうしてくっついていた。
それでも、残りの一週間をわたしは大切にしていきたい。
そんなわたしの願いは、予想だにしていなかった出来事で打ち消されてしまうのだった。