シンデレラLOVERS
「これでもう善雅くんは、善雅くんが好きな一人だけと愛し合えるね」
そう言った日菜琉の顔は、今までずっと隣で見せていた笑顔が浮かんでいた。
なんで笑ってんだよ。
なんで怒らないんだよ。
どうせなら罵って嫌ってくれた方が気が楽なのに……日菜琉はそうはさせてくれなかった。
「なぁ……俺のこと、殴って」
「えっ?! 無理だよ!」
「いいからっ」
日菜琉が俺を責めないなら、せめてこれくらいしてもらわないと気が済まない。
俺より背の低い日菜琉に目線を合わせて屈み、俺はギュッとまぶたを閉じた。
人を殴ったりしたことなんて無いだろう。
屈んだ俺を目の前にして動揺してるのが、目を閉じていてもヒシヒシと伝わってくる。
しばらくそうして日菜琉の反応を待っていると、
「じゃあ……いくよ?」
ようやく覚悟が決まったらしく、少し力んだ声で俺にこう告げてきた。
それに答えるように、俺は奥歯を食いしばる。
次の瞬間、
「っ!?」
俺の頬に触れたのは、日菜琉の拳でも無ければ平手打ちでも無い。
日菜琉の柔らかな髪の感触と、唇に軽い口づけが降りてきた。
思わず開いた目に飛び込んできたのは、見たこともないくらい悲しげな日菜琉の顔だった。