シンデレラLOVERS
日菜琉視点
「ねえ、やり直そうよ?」
目の前の静葉さんが口の端を上げて綺麗に微笑んでいる。
何も言わずにそんな静葉さんを善雅くんはじっと見つめていた。
彼女として否定された時点で、ここにわたしの居場所なんてない。
この場に居たくなくて、すぐにでも二人の前から逃げ出してしまいたい気持ちでいっぱいだった。
そんなことも出来ずに立ち尽くしてる弱虫なわたしに、優しい救いの手が差し伸べられた。
「水原さん」
「えっ……」
沈黙を打ち破って現れたのは、この間とは打って変わって真剣な顔をした城崎くんだった。
城崎くんは真っ直ぐにこちらへ向かってきて、そのままわたしの名前を呼びかける。
善雅くんでなく、わたしに……だ。
状況がわからず首を傾げるわたしの手を取って、城崎くんはそのまま善雅くんと静葉さんの横を歩き出してしまう。
「ちょっと付き合って」
「ちょっと! 城崎くん?」
「紘也っ!」
わたしの呼びかけにも、善雅くんの呼びかけにも城崎くんは答えないし振り向こうとしない。
それでも、わたしの手を引く力は強く……チラリと窺った横顔には気遣わしげな優しさが滲んでいた。
「紘也! おいっ!」
「おまえは……芳川と話あるんだろ?」
語気を強めた呼びかけに反応して立ち止まった城崎くんは、斜め後ろの善雅くんを睨むように振り返って冷たくこう言い放った。
……城崎くんは知ってるんだ、静葉さんのこと。
じゃあやっぱりわたしが邪魔だから、こうして二人の前から連れだそうとしてるんだ。