シンデレラLOVERS
「別れるって、どうしてっ!?」
ヨリを戻して早々別れを切り出した俺に、静葉は怒りでグッと眉を釣り上げた。
自分がフることがあってもフラれることなんて無い静葉にとって、これは初めての体験なのかもしれない。
「俺……他に好きな奴がいる」
この一言で静葉の綺麗な顔がみるみるうちにひきつっていった。
自分のルックスに絶対の自信を持ってる静葉のことだ。
きっとプライドがズタズタに傷付いただろうな。
「好きな奴って、まさかこの前一緒にいた女の子?」
黙って頷いてみせた俺に、静葉は鼻で笑ってクスクスと失笑する。
「わたしよりあんな子が好きなの?」
自信に満ちた笑顔を浮かべた静葉が、吐き捨てるようにこう言ってまた鼻で笑う。
……あんな子。
一ヶ月前の俺ならきっと、静葉のこの言葉に特に何も感じなかったと思う。
でも今の俺はこの言葉を聞いて黙っていることが出来なかった。
「おまえ、弁当作れる?」
「えっ? 何言ってるの……?」
「毎日毎日違うおかずで弁当作れる?」
「善くん……いきなりどうしたの?」
「自分が熱が出てしんどい時も、ありがとうの一言さえ言わない奴の為に……全部が手作りの弁当作れるか?」
矢継ぎ早に言葉を続けていく俺を、目の前で静葉が怪訝そうに見つめている。
静葉にどう思われようが関係ない。
今俺の中に居るのは、呪いみたいにずっと心に巣くってた静葉じゃない。
「どんな時でもずっと笑って、相手の好きなモノとか色とか些細なことも大切にして……」
一ヶ月の間、日菜琉が俺にしてくれたこと。
日菜琉を思い浮かべながら頭に浮かんでくる言葉をひたすら紡いでいく。
まるで自分に言い聞かせてるみたいに……。