シンデレラLOVERS
保健室の中に先生はいなかった。
その代わりに。
奥のベッドから聞こえる少し早い息遣いだけが、静かな保健室の中に響いてる。
きっと、善雅くんだ。
ベッドがある方へとゆっくり歩み寄り、カーテンの隙間から中を覗いた。
そこには苦しそうな寝息を立てながら、少し赤い顔をして眠る善雅くんの姿があった。
すっかり温くなったしまったおでこのタオルを取り、善雅くんの少し湿った前髪に触れる。
綺麗な形の唇、通った鼻筋にキメの細かな肌。
善雅くんの綺麗に整った顔を見つめる。
この顔を見た時からわかってたはずだ……。
わたしなんかの手には絶対に届かない遠い人だって。
釣り合わないって頭ではわかってるのに、わたしの心はまだ善雅くんを想ってしまう。
せめて、善雅くんが眠っている間だけでも傍に居たいくらい……。
「熱い……」
ぼんやりと見つめていた善雅くんの瞳が、うっすらと開いきながらこう呟いた。
まだ視界がぼんやりしているのか。
善雅くんはゆっくりと視線を動かして辺りを窺っている。
「あっ……大丈夫?」
「っ!?」
咄嗟にわたしが掛けた声に、善雅くんはパチッと微睡んでいた目を見開いた。
びっくりして当然だ。
だって、目の前に別れたはずの一ヶ月限定の彼女がいるんだから……。