シンデレラLOVERS

「だから恩返しがしたかったの」


あの時。
日菜琉を裏門に抱き上げて、抜け出すのを手伝ったこと。



その恩返しの為に俺のお願いを笑いながら聞いてくれてたって……。


こんなのまるで……、


「……鶴の恩返しかよっ」


口にしたら思わず笑えてきた。


鶴呼ばわりされた日菜琉が隣でふてくされたみたいに、ムッと唇を尖らせてる。


それでも、たったあれだけのことに、心を傷だらけにしながら尽くしてくれたこの鶴が堪らなく愛しくなる。



「それだけじゃないよ。……善雅くんの為にお弁当のおかずを考えたり、プレゼントを考えるのも楽しかった」



「おまえ……どんだけ俺のこと好きだったんだよ」


自信過剰とか自惚れんなとか、ツッコまれるの覚悟で口にすれば。


「今の方がもっと好きだよっ」



弾んだ声でこう返した日菜琉がにっと笑って、俺の腕にギュッと体を寄せた。


その言葉と体温を感じながら、俺は改めて日菜琉に受け入れられた喜びを噛み締めていた。


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