シンデレラLOVERS
イルミネーションを見た帰り道。
すっかり日が暮れて暗くなった道を、日菜琉の手を引きながら歩いていた。
日菜琉の家のマンションに近付いていくにつれて、離れがたくなって握っていた手に無意識に力を込めてしまう。
そんな俺の気持ちとは裏腹に日菜琉は、絡めていた指先をそっとほどいてしまった。
急に空っぽになった手のひらに冷たい空気が触れ、日菜琉の体温をますます恋しくさせる。
「これ」
手を離した日菜琉は、持っていたカバンの中から何かを取り出して俺に差し出す。
「あっ……」
日菜琉が差し出したモノを見て思わずはっとした。
編み上がったカーキ色のマフラー。
日菜琉が俺の誕生日プレゼントとして編んでくれていたそれは、前に見せて貰った時の倍以上の長さになっていて。
「あれから……編んでくれてたのか?」
自分と別れた後も編んでくれていたのか尋ねれば、小さく笑って頷いた。
完成したらわたしの前で巻いて欲しいな……
一ヶ月のタイムリミットの中。
そんなささやかな願いを口にした日菜琉に、頷きもしなかった俺の為に編まれたマフラーは見た目よりふかふかで温かい。
「善雅くんと静葉さんが並んだ時、すごくお似合いだなって思った。だから善雅くんのことを忘れようって思ったのに忘れられなくて……」
未練がましく編んじゃったの
そう続けながら背伸びをして俺の首にマフラーを巻いていく日菜琉。
自分の願い通りに、マフラーを巻いた俺の姿に日菜琉は嬉しそうにはにかんだ。
その日菜琉の表情を見たら、衝動的に傍らの日菜琉を抱き締めていた。