年の差と言えば大問題だけど所詮は365日

**これ昔から好きだもんなお前



一番目は、こうちゃん。


大学の1個上の先輩だった。筋トレと読書が趣味の変なお兄さん。背の高い、パワフルな人。松山千春の物真似が異様に上手い。

ぐいっとビールを飲み干し、苦笑いしながらこうちゃんが私を見つめた。白い歯がちらっとのぞいて、日に焼けたこうちゃんの肌の真ん中を陣取っている。

「ちさこ。どうした」

「ちさこって呼ぶのやめてよ、こうちゃん」

俺、先輩だけどなぁと呟いて、こうちゃんがメニューを開く。太い人差し指が呼び鈴を押す。タイムラグが少しあって、間の抜けたチャイムが店の中に響いた。

「あのね―――仕事ミスって、先方に謝りに行ったら、優しくされた。すごぉく」

死ぬ訳では無いけれど、放り込まれた海で溺れた時の話を私が独り言みたいに話すのを、こうちゃんは黙って聞いていた。






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