勿忘草―愛を語る花言葉―
桜咲く季節の訪れ
春の訪れを待ちわびる、三月の始め。
冬の寒さを乗り越えた木々が次々と色を帯びてゆく。
桜並木も花を咲かせる準備を始め、小さな蕾をつけてきていた。
会社から彼女が待つ川へと続くこの道。
四月には綺麗なピンク色に染まることだろう……。
今年もきっと、この景色を見ながら凪咲に会いに行くんだろうな。
だけど、来年は……。
今日、人事部長から告げられた突然の異動。
ニューヨーク支社への海外転勤。
「急に欠員が出てな、どうしても即戦力が必要なんだ。佐倉くんは若いけど力がある! ぜひ、ニューヨーク支社で頑張ってきてほしい」
入社して一年とたたない俺が海外転勤というのは異例のことだった。
それなりの実績や評価がなければ、絶対にありえない話だと思う。
つまり、俺は認められたということ。
それは正直なとこ嬉しい。
海外で仕事をすることは、例え自分が志望したところでチャンスがなければできない。
まさかこんなにも早く、チャンスが訪れるとは夢にも思っていなかった。
……そう。夢だったんだ、海外勤務。
けど……。