勿忘草―愛を語る花言葉―

藤堂さんはベンチから勢い良く立ち上がると、俺の正面に立った。


真上から降り注ぐ太陽の光を少し遮り影をつくる。


眩しいぐらいの日差しがちょうどよくなる。



「俺は今この場所に一番必要な存在なんだよ。四月から入社する新人の教育係としてな。
俺以上に教えるのがうまい上司はいないからな〜。それくらいの自信と誇りを持ってやってるし」



藤堂さんの言葉や表情からは、本当に自信が満ち溢れて見える。


そして嬉しそうな表情も垣間見えた気がした。



「俺が育てた佐倉が認められたってことは、俺も評価されたってわけだ。最高だろ?」



そう言って笑顔を見せる藤堂さん。

……改めて、この人の元で働いていることに誇りがもてた。


まだ半人前の俺を認めてくれて、心の中にあった氷の固まりを外側からゆっくり温めて溶かしてくれる。


俺の悩みなんてお見通しってわけか。


ポーカーフェイスの裏に隠している本音に気付いてくれる。



確かに……藤堂さんの代わりなんていない。



「ハハッ。藤堂さんありがとうございます」



俺はその場に立ち上がり、やっと藤堂さんが伝えたいことを理解することができて胸が熱くなった。





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