勿忘草―愛を語る花言葉―

藤堂さんの言葉に、動いていた足が一瞬止まる。


なんで気付くんだろう。


どこまで面倒見のいい上司なんだろう。


歩くスピードを緩めることなく進んでいく藤堂さんの後ろ姿を見つめながら、自分もいつか追い付きたいと思った。


あの大きな背中に。


周りから慕われ尊敬される器の大きい人に。



「今晩よろしくお願いします」


「じゃあ、今日は早めに仕事切り上げるぞ」


「はい」



今はまだ後ろを追うしかできないけれど、いつか、隣を並んで歩いていけるような男になりたい。


そして藤堂さんのように、悩んでいる後輩を気遣えるようになりたい。


そんなことを思いながら、藤堂さんの後をついていき仕事に戻った。



凪咲には今晩上司と飲むとメールをした。


毎日の日課となっているメールが今日はできそうにないから。


あいつは……連絡しておかないといつまでも待ってんだよな。


嬉しいんだけど。


やっぱ心配になるだろ?


俺の体の心配ばかりで自分は二の次。


まぁ、そんなとこも好きなんだけど……な。





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