勿忘草―愛を語る花言葉―

「お待たせしました」



俺が悩んでいる間にも、先にドリンクが運ばれてきた。


藤堂さんの前に置かれた、いかにも凪咲が好きそうなオレンジ色したカクテル。


俺の前には今にも溢れ出しそうな泡を出すビール。


店員さんが立ち去る前に藤堂さんは先に注文を済ませ、



「取り合えず乾杯するか」


「そうですね」



小さく音が鳴る程度にジョッキとグラスを合わせ、グイッと一気に飲み干した。


仕事の後のビールは最高で、すきっ腹だと言うのに思いっきりアルコールを流し込む。


そうすると、今度は煙草が吸いたくなるわけで。


そんな俺の思考をお見通しなのか、昼間同様ジッポを差し出してくる。



「ありがとうございます」


「そう言えば……」



言葉を止めて灰皿に煙草を押し付けて一口ずつカクテルを飲む藤堂さんは、空になった俺のジョッキを見るなり追加注文をしていた。


普通は部下がするべきことを手際よく素早く行なう。

本当に頭が上がらない。



藤堂さん曰く、気配りできての先輩だ……と。


自分が見本となることで後輩を育てていくんだと。