勿忘草―愛を語る花言葉―
涙溢れる卒業式
「隼人〜!!」
来た……うっ……。
これはデジャヴ? そう思えるぐらい、毎回同じことをしてくる。
「ったく、毎回突っ込んでくるなよ」
「だって〜!! 嬉しいんだもんっ!!」
土曜の正午前。
タックルをかまして公衆の面前で抱きつき、頬を赤く染めて見上げてくる凪咲。
「周りから見られてるけど?」
「えっ? きゃっ!!」
慌てて体を離し、小動物のような顔をして「ごめんね」って謝ってくる。
そんな姿につい、可愛いなんて言葉を発しそうになるのを堪えて視線を逸らす。
「ほら、早く大学行くんだろ」
「うん。だってさぁ、隼人が休みとれたことが嬉しくて」
先を歩き始めた俺の服の裾を少しだけ掴んで、不貞腐れた声を出してついてくる。
ったく……。
「ほらっ」
後ろに差し出した左手。
凪咲は急いで手を絡めてきた。
笑い声が聞こえてくるし、きっと顔がにやけてるんだろうな。
視線を少しだけ向けると予想通り。
本当に幸せそうな顔してるよな。
そんな凪咲を見ていると、こっちまで幸せな気分になれそうだ。