勿忘草―愛を語る花言葉―
何かと忙しいこの時期。
残業続きである程度仕事を片付けた俺は、凪咲と待ち合わせをして大学の卒業式へと向かっていた。
青く澄み渡った空に、地上に降り注ぐ太陽の日差し。
まるで今日と言う日を祝福しているかのような陽気に、二人の体の間をすり抜ける心地よい風。
「暖かくなってきたよね〜」
凪咲は手をかざし、眩しいくらいの上空を眺めた。
つられて空を見上げれば、遥か彼方まで続く吸い込まれそうなほどの蒼。
どこまでも繋がる空だけど、それは果てしなく遠い……か。
頭から離れることのない海外転勤と言う現実。
「隼人?」
気付けば凪咲は俺の顔を覗き込んでいた。
「暖かくなってきたからって、どこでも寝るなよ」
「分かってるよ〜!! 気をつけるもんっ」
……凪咲でよかった。
俺の様子に何かを感じながらもごまかせる。
もし問い詰められたら、こんな中途半端なままの気持ちで言ってしまいそうだった。
それだけは避けたい。
何で俺はこんなにも情けないんだろうな。