勿忘草―愛を語る花言葉―
「あっ、大学見えてきたよ〜」
一人考え事をしていた俺は凪咲の声で我に返る。
西の方向を指差して笑顔を向けてくる凪咲。
一戸建やマンション、ビルの間から頭一つ出た白い高い建物。
遠めに見ると陽の光で白く輝いて見えるんだけど、実際の壁は白い色がはげて土色に汚れている。
伝統のあるマンモス校で、年季の入った校舎。
「そろそろ式が終わる時間だな、急ぐか」
「うん!」
少し早足で進む見慣れた町並み。
つい一年前まで通っていた大学なんだけど、妙に懐かしい気持ちになる。
行きつけの定食屋に居酒屋。
ここを進んだ先には……あった。
凪咲とよく来ていたカフェ。
【PEACH FIZ】
相変わらず変わってないな。
そうやって昔の記憶を辿りながら、凪咲と過ごした大学時代を思い返していた。
「隼人〜、この道一緒に通るの久しぶりだよね。何だか昔に戻ったみたいで嬉しいな」
「本当に久しぶりだよな」
凪咲も同じように思い出しているのかな。
俺の顔を見て口元を緩め、握り締めている手をギュッとしてきた。