勿忘草―愛を語る花言葉―
二人で正門をくぐりぬける。
式が行われている体育館は正面に広がる裏庭の遥か彼方。
「体育館の前まで競争な?」
「……隼人がそんなこと言うなんて珍しいね?」
確かに。
不思議そうに見つめる凪咲を見ながら、自分でもそう思った。
きっと久しぶりに大学を訪れて、気持ちがあの頃に戻ったんだろう。
晴れ渡る青空に、辺り一面太陽に照らされた新緑。
社会のしがらみや人間関係にとらわれることなく、仲間たちと馬鹿やって楽しんだ大学時代。
毎日当たり前のように過ごしていたこの場所で、今だけは悩みなんか忘れてあの頃のように駆けていきたい。
そんなことを思った。
「じゃー先行くな」
「ずるーい、待ってよー!」
あの頃の俺は、こんなことで悩んだりしなかっただろう。
真っ先に凪咲に言っていただろうな。
良くも悪くも成長したってこと……か。
もう、凪咲があんなに泣いて苦しむ姿は見たくない。