勿忘草―愛を語る花言葉―

そう、既に予測済み。


俺が卒業した去年も、その前の年も……。


凪咲はこれ以上ないぐらいの涙を流した。


だから用意した黒いハンカチ。

次々と現れる黒い線を消していく。



「ほら、そんな顔じゃみんなに会いに行けないだろ?」


「うん……っ……」



頭の上に手を乗せて、優しく撫でながら髪を梳く。


そんな俺の顔を見上げ、泣きながらも笑顔を向ける凪咲。



「ありがと……」


「行くか?」


「うん」



少し落ち着きを取り戻した凪咲は、思いっきりハンカチで顔を拭くと零れ落ちそうなほどの笑顔になった。


本当に感情表現が豊かだよ。


さっきまで泣いていたかと思えばもう笑っている。


こういう素直な感情を表す凪咲のこと好きなんだよな。


そんなところに、今も知らず知らずのうちに惹かれているのかもしれない。


感情のままに動く凪咲のこと羨ましいのかもしれない。





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