勿忘草―愛を語る花言葉―
「ハンカチ今度洗って返すね」
未だ涙腺が緩んで涙目になる凪咲は、ハンカチで目頭を押さえながら歩いている。
少し顔を上げているのは、涙を零さないようにしているからなのだろうか。
「あぁ、いつでもいいよ。それよりみんなに会う前に鏡見ないとな」
「……凄いことになってる?」
「かもね」
そんな俺の言葉に、慌ててバッグの中から手鏡を取り出し顔を確認している。
「うわ……ブサイク〜」
苦笑いをして化粧の落ちたところを入念にチェックを入れて、ティッシュで汚れを取っていた。
「これじゃあ化粧の意味ないし」
「別にスッピンでも可愛いけど?」
「っ……隼人〜」
たまには凪咲のように素直な気持ちを伝えるのも悪くないよな。
……また、人前で抱きついてきたけど。
そんな凪咲の髪の毛の間から見え隠れする耳たぶは真っ赤で、そんな些細なことが嬉しくなる。
だから今だけはこのままでもいいかな。
俺は凪咲に応えるように、背中へと腕を回して抱き締めた。