勿忘草―愛を語る花言葉―
そっか、もうそんな時期か。
「いつ?」
「えっとねー、あれっ、ちょっと待って」
凪咲らしいド忘れに自然と笑いが出てくる。
バックの中から携帯を取出すと、カチカチと携帯のボタンを鳴らしていた。
「あった。ほら、隼人見て〜!!」
嬉しそうに差し出してきた携帯を受け取り、画面を覗きこんだ。
「廉次からか、懐かしいな」
俺が卒業して一年。
出張や接待、付き合いや飲み会、とにかく仕事が忙しくてサークルには全然顔を出せなかった。
メールの送信相手は俺の後輩で、凪咲の先輩にあたる菊地廉次(キクチレンジ)から。
「みんなね、隼人が忙しそうだから誘うの遠慮してるみたい。来れそう?」
そう言いながら上目遣いで俺の顔を覗き込んでくる。
はぁ……反則だろ……。
そんな何気ない姿にドキッとさせられるんだけど、当の本人はまったく自覚なし。
悔しいから教えてやらない。
「それにね、華先輩も祥子先輩も昴先輩も来るって!!」
凪咲が言う懐かしい名前に顔が緩んでいく。
大学時代サークルで仲がよかった俺とタメのメンバー。
卒業してからというもの、お互いの時間が合わずになかなか会えなかったんだよな。