勿忘草―愛を語る花言葉―
「そういや凪ちゃん、本当に目の下黒くなってるよ? もしかしてもう泣いちゃった?」
「えっ、うそー!」
あっ、本当だ。
さっき拭き取ったはずなのに、また目の下が黒くなっている。
焦って手鏡を取り出し一生懸命拭き取っている姿を見て、また昴と二人で目を合わせて笑った。
「ねぇ隼人、取れた?」
手鏡で確認しながらも俺に問い掛ける凪咲に、
「今度は大丈夫」
と言うと嬉しそうに笑顔を向けてきた。
そして、俺たちはようやく卒業式が行われている体育館へと歩きだした。
近づくにつれてだんだん人で賑わっていく。
昴とは取り留めのない話で盛り上がり、凪咲は相づちをうちながら、またもや涙目になっていた。
「凪ちゃんって本当に優しいよね」
昴の突然の発言にキョトンとする凪咲。
「卒業式ん時は嬉しかったなぁ〜。俺らなんかのために号泣してくれるなんて。な、隼人?」
「ん……あぁ、そうだな」
相づちをうちながらも思った。
俺は嬉しいと言うよりつらかったなと。
凪咲の優しい一面に惹かれたことは事実で。
だけど泣いている姿なんて見ていられなくて。
そう言えば、凪咲を意識しはじめたのも卒業式からだったな……。