勿忘草―愛を語る花言葉―
「じゃあ自己紹介しようか。私は三年の華田花梨、よろしくね」
その言葉を皮きりに、次々と自己紹介が進んでいった。
それを聞いている新入生たちはきっと、ここにいる十数人の名前なんて一度に覚えられないだろうな、なんて思いながら自分の自己紹介をした。
「俺は三年の佐倉隼人、よろしくな」
俺はなぜか彼女を視界に捉えながら言っていた。
真剣な顔をして聞いている彼女は、俺の名前を覚えてくれただろうか。
「じゃあ次は新入生、まずはなぎさちゃん、もう一回いいかな?」
華がかけた言葉に一瞬肩を震わせ深呼吸をした彼女は、先程とはうって変わって落ち着いた声色で自己紹介を始めた。
「経済学部の藤井凪咲です。少し落ち着きがないところもありますが、よろしくお願いします」
あ、やってしまう。
そう思った時には後の祭り。
「アハハッ、なぎさちゃん面白いね〜!」
落ち着いていたのは声だけで、勢いよくお辞儀をした拍子にバッグの中身が散乱。
ファスナー閉めとけって言ったのにな。
「あ、本当にすみませんっ!!」
慌てて荷物を掻き集める彼女に、再び部室内は笑いで溢れる。
本当に目が離せなくて手のかかるやつ……。
ふじいなぎさ……か。