勿忘草―愛を語る花言葉―

笑いで溢れる中、呆然としていた彼女と目が合い、体を近付けて話しかけた。



「送るよ、ここから家は近い?」


「あ、はい……歩ける距離です」


「じゃ行くか。ほら、立って?」



先に立って着いてくるよう促したが、彼女は顔を伏せて動こうとしない。


その様子が気になり伺っていると、ゆっくりと顔を上げ恥ずかしそうに微笑んだ。



「あの……」



周りの声にかき消されそうなくらいの小さな声に耳を傾ける。


俺以外のやつらも何事かといった風に彼女を見つめ、騒がしい店内を余所に、その空間だけは静寂と化した。



「足が痺れちゃって……立てないんです」



静寂は束の間だった……。



「アハハッ、凪ちゃん可愛いー」


「隼人お姫さま抱っこしてやれば〜!」


「凪ちゃんって天然だよね」



再び辺りは大爆笑。


笑ったらいけないと思いつつも、俺さえ吹き出しそうになるのを必死で堪える。


本当に彼女は天然だ。


天然記念物。


今まで周りにいなかったタイプの女。



「痺れが治ったら声かけて、家まで送るから」



その言葉に彼女は顔を赤らめながら頷いた。





< 47 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop