勿忘草―愛を語る花言葉―
「隼人〜、駆け付け一杯いっとけー!」
彼女を待っている間。
そう言って先輩に手渡されたジョッキを片手に、一気に生ビールを流し込む。
バイトで疲れ果てた体に乾いた喉が潤ってくる。
一気に飲み干して空になったジョッキがすばやく取り替えられる。
「先輩……俺、二十歳になったばかりなんですけど」
「二十歳になったんだから問題なしじゃん! ってか、隼人って呑める口だろ」
俺らのサークルは、未成年は飲酒禁止という厳格な一面を持っている。
だけど、ひとたび二十歳になれば浴びるように酒を飲ませられる。
……と言うよりは、酒豪が多くて浴びるように飲んでいる。
「いいなぁ。私、まだ誕生日来てないから飲めないんだよね〜」
羨ましそうに祥子がジョッキを眺め、生唾を飲み込んでいる。
サークル内では飲んでいなくても、他ではこっそり飲んでいるんだろう。
羨ましそうな顔付きから、恨めしそうな顔つきに変化していく。
バシッ――。
そして突如頭を軽く叩かれ、外れた視線から再び祥子の顔を捉えると、舌を出して悪戯っぽく笑っていた。