勿忘草―愛を語る花言葉―
そういうところだけは抜け目ないと言うか、まったく、気付かないで欲しかった。
「つられたんだよ……」
らしくない自分の発言に恥ずかしくなって、手で顔を覆い隠してため息をついた。
彼女と一緒にいると自分のペースがいとも簡単に崩される。
初めて彼女に会ってからというもの、今までの俺らしくない言動ばかり。
それがいいのか、悪いのか……。
「佐倉先輩って可愛いですね」
「えっ?」
「あっ、すみません、そんなこと言われて嬉しいわけないですよね!」
プッ……。
また慌てて訳の分からない行動起こしてるし、いつ見ても飽きないな。
可愛い、か。
そんなこと言われたのは初めて。
「いいから、遅いし帰ろうか」
そう言って俺は先に歩き始めた。
追い掛けてくる足音が聞こえてきたかと思うと、あっと言う間に俺を追い越して、
「家はこっちです!」
無邪気に笑いながら、家までの道を案内してくれた。