勿忘草―愛を語る花言葉―
全力疾走でもしてきたのかというくらい髪はボサボサ。
そして肩を上下させて息の乱れる彼女の姿があった。
「何やってんの?」
呆気にとられて口を開く。
彼女の家からは随分進んだこの場所。
何かよほどのことでもあったのかと、彼女の顔を覗き見る。
すると彼女は何かを差し出し、呼吸も整っていないまま口を開いた。
「あっ……あの……これっ……」
よくよく見てみると、一本の缶コーヒーが彼女の手中に収まっている。
まさか、そこまで……?
「送って……もらったのに……お礼して……いなかったから」
そう、まさかのまさか。
わざわざこれだけの為に、夜道を一人走ってきたってわけね。
「はぁー。ありがと」
彼女、凪咲は超ド級の天然記念人物だな。
まだ温かい缶コーヒーを受け取りながらそう思った。
そして、彼女は嬉しそうに微笑み「じゃあ、気を付けて帰って下さい」なんて言って、一人で来た道を戻ろうとする。
「ちょっと待って?」