勿忘草―愛を語る花言葉―
「何だよ?」
さっきより気持ち悪いくらいニヤついて、隣を歩きながら俺の肩をトントンと叩いてくる。
「お前、呼び捨てじゃん」
「……あー、凪咲が呼び捨てでいいって言ったから」
家には上がらなかったものの、マンションのエントランスで話をすること、かれこれ一時間。
ようやく話に区切りがついて、凪咲の前を後にしようとしたその時――。
「あ……あのっ!!」
「どうしたの凪咲ちゃん?」
呼ばれて振り向くと、凪咲は笑顔を向けてこう言った。
「凪咲……。凪咲って呼んで下さい!」
普通はさ、そんなこと言われたら誤解するだろ。
“俺に気がある?”って。
「さっき、佐倉先輩“凪咲”って呼びそうになりましたよね?
私、“凪咲ちゃん”より“凪咲”のほうが呼ばれ慣れているんで!
だから“凪咲”って呼んでください!」
「分かった、じゃあ俺のことも“隼人”でいいよ? みんなそう呼んでいるし」