勿忘草―愛を語る花言葉―
パラパラパラッ。
いち早く耳に入った音は、紙が捲れる音で……。
開いた窓から風が入り、カーテンがユラユラと揺れている。
春の心地よい風、なのは分かるんだけど。
俺はドアを開けたまま、そのままその場に固まってしまった。
昨日と同じだし。
この状況……
俺はどうすればいいんだ?
唖然とする。
開いた口が塞がらないとはまさにこのことだな。
ようやく歩き始めた俺は、部室の中央に置いてある長机に近づいていった。
「凪咲?」
……やっぱ返事はないか。
そのまま椅子に腰掛け、足の上に肩肘ついて、目の前の光景を眺める。
長机の上でパラパラと捲れるノート。
風が吹くたびにフワフワとなびく髪。
俺と反対側の椅子に座って、長机の上で俯せになっている人物。
……凪咲。
「ったく……、どこでも寝るんだな」
ある意味尊敬するよ?
なんて感心する。
だから電話出なかったんだな。
気持ち良さそうな寝息が絶えず聞こえてくる。
まぁ、3限は何も講義入ってないし。
まったく起きる気配のない凪咲を前に、とりあえず様子を見ることにした。