勿忘草―愛を語る花言葉―
ドドドドドッ!!
階段を早足で駆け上がる音。
「あ、来ましたよ」
「あ、うん。昴だろうな」
タイミングよく来てくれた昴に感謝しつつ、二人で部室のドアを眺めた。
足音はドアの前で止まったかと思うと勢いよくドアが開き、
「千理おまたせ!!」
汗をたっぷりかいて髪の毛がボサボサになっている昴が現れた。
部室に置いてあるハンドタオルをすぐさま昴に差し出す千理。
昴はハンドタオルを受け取ると同時に、手にしていたビニール袋を千理に渡し、「あっち〜」と言いながら顔をゴシゴシと拭きはじめた。
顔からハンドタオルが離れてようやく、
「あっ、隼人いたんだ」
と俺の存在に気付いた。
「あれっ、凪ちゃんは?」
そんな昴の問いかけに千理と二人で顔を見合わせて、長机に伏せている凪咲を指指した。
こんなに騒がしいのに……
よくもまぁ熟睡できるもんだな。
起きる気配はまったくないし。
二人に任せてご飯でも食べに行こうかと声をかけようとした。
すると、昴が突拍子もない提案をしてきた。
「なぁなぁ、今度は耳元で囁いてみたら?」