ブック・ワーム
まあ、いいや。早く本選ばないと、俺が怒られちゃうよ。

そう思って、本棚を回り始めた。

『おすすめのコーナー』という色紙で作られた飾りのところには、本は一冊も置かれていない。

きっと、この中の何人かが、何を読もうかも考えられずに、ただおすすめだからと手にとって持っていったんだろう。

俺もその一冊がよかった。

いちいち考えずに、すぐに本を開くことができるから。

おすすめっていうくらいだから、きっと当たりはずれもおきにくいだろうし。

しかし、ここには一冊も置かれていない。

ったく、めんどくさがりな奴らめ。

俺は自分のことを棚にあげながら、俺の背より高い本棚の中へ入っていった。

ちょうどここらへんは窓からの光が遮断されているため、ちょっとした暗がりになっていていい。

ああ、できればここで一眠りしたいな〜。

そんなことを考えながらも、目は本棚を向いていた。

なんだかんだで、俺もルールとかの決まりごととかには弱い。

何かないかと探していると、奥のほうにおすすめのコーナーがあった。

なんだ。あるじゃないか、こんなとこにも。

そこには一冊だけ本が置かれていた。

古くて分厚い本。

そんな本なんて、本当は読みたくないけど、もうあれこれ探したくないから、それを手にとって、机のあるところに戻った。
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