恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。


2限目の音楽の授業は移動教室だ。

紫ちゃんと音楽室へと向かため、階段を上がり3階へやってくる。

この階には3年生の教室があり、その前の廊下をふたりで歩いていた。

雅臣先輩、いないかな~?

そういえば、雅臣先輩って何組なんだろう。

扉の四角いガラスから、彼の姿を探していると──。


「あ、教科書間違えちゃった!」


廊下の途中で、忘れ物に気づいた紫ちゃんは立ち止まった。

音楽の教科書ではなく、前の授業で使った数学の教科書を持ってきてしまったらしい。


「じゃあ、教室に取りに戻ろう」

「ごめんね、清奈ちゃん」

「ううん、大丈夫だよ」


何度も謝る紫ちゃんに、私は安心させるように笑みを向ける。

そして教室へ戻るため、来た道を引き返している時だった。


「俺のせいで、ごめん」


授業開始が近いせいか、廊下は静かだった。

その中に響く悲しげな声。

私達は顔を見合わせて歩みを止めると、耳を澄ませる。

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