恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「朝霧くん……」
「俺、自分の気持ちばっかりで、小町先生の事なんも考えてなかった。まさか、謹慎させられるなんて……」
声は、廊下の途中にあるラウンジから聞こえてきた。
朝、話題に上がっていたふたりの名前が聞こえてきて、私の心臓はドクドクと大きく脈を打ち始める。
こっそり顔だけのぞけば、スーツを着た栗色のショートヘアーの女性と無造作にセットされた黒髪の制服を着た男の子が向き合うようにして立っていた。
ラウンジの奥の壁は全面窓になっており、そこからまんべんなく差し込む太陽の光がふたりの輪郭を朧気にしている。
まるで、夢の中のつかの間の逢瀬のように見えて、胸がキュッと締め付けられた。
あの噂、本当だったんだ……。
具体的になにがあったのかはわからないけれど、休職させらるほどの事が学校の人にバレてしまったらしい。
朝霞先輩はそれを自分のせいだと、責めているようだった。
「話があるって言うから、ついてきたけれど……。この話はもう終わり。私はもう、あなたを特別扱いしない」
私達はこのタイミングでラウンジの前を通るわけにもいかず、廊下の壁に背をつけてふたりの話を聞いていた。
小町先生の覚悟を決めたような言い方に、私の胸もチクリと痛む。
聞いている私でさえ、こんなに切ないんだ。
朝霞先輩と小町先生は身を切り裂かれるような痛みを堪えているんだろうと思う。
「なんでだよ……生徒と教師だからかよ」
「……お互いのためにも、もう関わらないほうがいいの」
「違う! 先生は高校を辞めたくないからだろ!」
「──っ」
責めるように、言葉を重ねた朝霧先輩。
息を詰まらせた小町先生は小さく深呼吸をすると、もう一度口を開いた。