恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「君、誰?」
怪訝そうな顔をする朝霧先輩に、私はがバリと頭を下げる。
「盗み聞きしてしまってすみません! 私、1年で古典研究部の小泉清奈といいます」
「あっ、同じく物部紫です」
私に続いて、紫ちゃんも頭を下げる。
私たちが古典研究部だとわかったからなのか、朝霞先輩の警戒するような顔が柔らかくなった気がした。
「古典研究部って……小町先生が顧問してる部活か。それで、違うってどういう事だ?」
仕切り直すように尋ねられて、私は「あっ、はい!」と朝霞先輩の目を真っ直ぐに見据える。
私の言葉を待つ彼は態度にこそ出さないが、不安そうに見えた。
「ひとつめの和歌は、現実にいると人目を気にすることもあるだろう。でも夢の中でさえ私は、他人の目を気にしてる……という意味になります」
それを聞いた朝霞先輩は、あからさまに顔を歪める。
「やっぱり小町先生は、俺より周りの反応の方が大事なんだな」
朝霧先輩は私の話をすべて聞く前に、俯いてしまった。
なので私は、「いいえ」と首を横に振る。