恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「苦しんでる……のか、俺のせいで……」
やっぱり朝霧先輩、自分を責めてるんだ。
思いつめている様子の彼に、なにか声をかけなきゃと口を開こうとした時、「朝霞先輩のせいじゃないです!」と紫ちゃんが叫ぶ。
朝霧先輩は悩みにやつれた顔で、ぶんぶんと首を横に振る紫ちゃんを見た。
「恋に苦しみはつきものです!」
「え……?」
「それを乗り越えられてはじめて、通じ合えるんです!」
そう言った紫ちゃんの言葉は、胸に響くものがあった。
心に染みわたるみたい……。
小説家志望だからか、言葉選びも真っ直ぐで和歌のように綺麗だ。
「そっか……俺は小町先生がどんな気持ちで遠ざけたのかも考えようとしないで、自分の想いを押し付けてただけだったんだ。そうしないと、苦しかったから……」
朝霧先輩はどこか遠い目で、ラウンジの窓から見える青空を見上げた。
あの空をその目に映しながら、朝霧先輩は心に住み着く人を想っているんだろう。
温かくて、切ない。
まだ青いもみじが、唐紅に染るように。
胸のうちに秘めた恋心を、静かに燃やしているのだ。
その眼差しを見れば、すぐにわかった。