恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。


「だから、俺が大人になるのを待っていてほしいって、伝えようと思う」

「……きっと、小町先生も喜ぶと思います」


晴れやかな顔で告げる朝霞先輩の覚悟を後押しするように、私は強く頷いてみせた。

それに、小町先生もそれを望んでいるはずだから。

先生の立場上、素直に喜ぶ事は難しいかもしれない。

でも口では嬉しいと言葉にできなくても、想い人からもらう未来の約束なら、私は嬉しいと思う。

そこにたどり着くまでに何年、何十年かかるとしても、待ち続けると思うから。


「じゃあ、和歌でお返事するのはどうでしょう?」

「あ! 紫ちゃん、それナイス!」


紫ちゃんの提案は、古典研究部の顧問である小町先生への告白にはもってこいだ。

私達は悩みに悩んで厳選の結果、ある和歌を朝霧先輩に教える。


「あぁ、俺の気持ちにぴったりだな。ありがとう」


それを聞いた朝霧先輩は心に刻み込むように、何度も和歌を口ずさんでいた。

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