恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「小町先生……!」
駆け寄ろうとした朝霧先輩は、手が届くか届かないかの絶妙な距離でふいに足を止めた。
悔しげに俯き、拳を握ると「あんなの……」と呟く。
「……あんなの事実じゃないですよ。俺が先生みたいな年増、彼女にしたいとか思うわけないって」
無理やり残忍な笑みを張り付けた朝霧先輩は、そう言って小町先生を鼻で笑った。
そんなの本心じゃないはずなのに、どうして……。
そこまで考えて、ふと気づく。
教頭先生の前で庇えば庇うほど、ふたりの立場はどんどん悪くなる。
だから、突き放した方が小町先生を守れると思ったんじゃないだろうか。
「──えぇ、そうね」
小町先生はすべてわかっているのか、傷ついた心を朝霞先輩と同じように笑顔の裏に隠した。
ふたりは平静を装っているけれど、苦しかったはすだ。
大好きな人を嘘とはいえ、嫌うフリをしなければならないんだから。