恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「清奈がここにいるのを知ったのは、弟から聞いたからなんだ」
「……その人も、雅臣って言うんですね」
完全にへそを曲げている私は、皮肉を込めてそう言った。
わかってる、根に持って子供みたいだって。
でも、それだけ私にとって雅臣先輩という存在は大きかった。
私の心をずっと支え続けてくれた人だったんだ。
どうして、私の世界に踏み込んだの?
ずっと隠し通せると思っていたのだろうか。
ふたりに出会わなければ、こんなに苦しくてぐちゃぐちゃした気持ちにならずに済んだのに。
「……弟が清奈っていう女の子が俺に会いに来たんだけど、兄貴と間違ったんじゃないかって」
彼は私の皮肉に肩を竦めて、むしろ気遣うような眼差しを向けてくる。
こういうところ、やっぱりずるい。
どちらの雅臣先輩も、優しいところだけは変わらないから。
「学校の最寄り駅にいた俺は、慌てて逆の電車に乗って、清奈を探しに来たんだけど……まさか、見つけられるとは思わなかった」
私を……探しに来てくれたの?
じわじわと胸に温もりが広がっていくのを感じて、嬉しいはずなのに……。
胸を支配するのはやっぱり、突きつけられたふたりの雅臣先輩の真実だ。
幸福感はすぐに、正反対の絶望感によって塗り替えられていく。