恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「今の雅臣は、清奈の知る雅臣とはちょっと違う」
「違うって、どういう事ですか?」
「どこから話したらいいか……」
大きな図書館の、膨大な本の中からたった1冊を探すという無理難題を目のあたりにしているかのように。
雅臣先輩は、難しい顔で分厚い灰色の空を見上げた。
その瞳は空よりも、もっと遠くを見ているみたいで、私の胸に切なさを連れてくる。
今君は……何を考えているのだろう。
何を抱えているのだろう。
それを知るのが怖いのに、知らなければいけない、そんなかすかな焦りを常に感じている。
それは今に限らない、出会った時からだ。
彼の笑顔への違和感に気づいた時からずっと、この胸に疑問と共に渦巻いていた。
しばらく沈黙を貫いていた彼は、「あれは……」と呟く。
私たちを取り巻く空気に圧迫感が加わり、ただじっと彼の言葉を聞く覚悟を決める。
「今から2年前の事だった」
景臣先輩は静かに重い口を開くと、私の知らない真実の物語を話し始めるのだった。