恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
『せ、い……な? 誰だろう、俺の知ってる人?』
『──っ』
言葉にならない悲鳴を上げて、俺はその場に崩れ落ちた。
そんな俺を雅臣は『どうしたんだよ!』と心配するように顔をのぞき込んでくる。
俺は心配されていい人間じゃない、むしろ責められるべき人間だ。
『すまない……すまないっ』
俺は……俺は、なんて事をしてしまったんだ。
どうせ記憶を失うなら、俺のを持っていけばよかったんだ。
俺は中学時代にそれほど、思い入れのある記憶なんてない。
忘れたくないと願うほど美しい思い出も、なにもなかった。
『なのにどうして、雅臣だったんだよ……!』
誰かに恋して愛した、なによりも尊い想いを俺は雅臣から奪ってしまったんだ。
永遠に消えないだろう後悔にさいなまれながら、世界は憎らしいほど当たり前に明日を連れてきて、気づけば事故から3カ月が経っていた。
雅臣は体調も回復てきて、リハビリのおかげか体も思うように動かせているらしい。
しかし、休学していた高校の出席日数が足りなくなった雅臣は留年になってしまった。
事故後の後遺症も経過観察が必要だったので、これを機に通院する病院の近くにある高校に転校する事になった。