恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
3章
誰がために心悩まし
***
「だから、今の雅臣は清奈の事を覚えてないんだ」
「そん……な……」
彼から語られる真実は、想像を絶していた。
私があの部室でのうのうと生きている中、雅臣先輩が事故に合っていたなんて……。
どうりで、告白の返事をしても覚えてないわけだ。
だって、彼は私を好きだった雅臣先輩じゃない。
罪滅ぼしのために、私の大切な人のフリをしてくれていたんだ。
そして本物の雅臣も私が好きだった事を忘れて、新しい人生を歩んでる。
なら私は……私の居場所はどこにあるの?
この胸に消えず残っている恋心は、どうすればいいの?
色んな感情に、胸が押しつぶされてしまいそうだった。
「初めて会った時、私が清奈だとわかったのは……雅臣先輩から話を聞いていたからなんですね」
「……そうだ」
「あの時、会いたかったって言ったのは……」
答えを聞く事が怖くて、私は面白くもないのに薄汚れたローファーをじっと見つめる。
目の前にいる彼は、私が好きだった彼じゃない。
なのに、泣きそうな顔で私に会いたかったと言った彼の真意がどうしても気になった。
「やっと、君に償えると思ったからだ」
「──っ、そう……ですか」
ズキリと、胸が引き裂かれそうな痛みに襲われる。
聞かなければよかったと、自分の問いかけを後悔した。
あの言葉がそんな悲しい理由から出た言葉だなんて、悲しすぎるよ。
でも、どうして悲しいんだろう。
私が好きになったのは雅臣先輩で、景臣先輩じゃない。
なのにどうして、景臣先輩の優しさが罪悪感からくるものだと知った瞬間──こんなにも泣きたくなるのだろう。
でも景臣先輩が話した事は、全て事実なんだろう。
だって、今まで彼に感じていた違和感の正体が全てそこに繋がるから。