恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。

「後ろめたくて、本当は何度も雅臣じゃないって打ち明けようとした」

「それは本当……ですか？｣


彼を責めたいわけじゃないのに、疑いの眼差しを向けてしまう。

私が本当の雅臣先輩に会わなければ、話さなかったんじゃないだろうか。

そんな疑心が胸の中に渦巻いて、胸の中がモヤモヤして、イライラが隠せない。


「あぁ、本当だ。でも、話せなかった」

「どうして、ですか……」


自分でもわかるくらい、不機嫌な声で返した。

心の中がごちゃごちゃにかき回されて、もう自分の気持ちがよくわからない。

私は何に対して、怒っているのだろう。


「俺が俺らしく生きたら……雅臣と清奈に申し訳ない｣

「申し訳ないなんて……」

「俺がいなければ、今頃ふたりは幸せになってたはずなんだっ」

「──っ、それでずっと、黙っていたんですか？」

「そうだ、俺がお前達の運命を狂わせてしまったから」


そう言った景臣先輩の瞳には、絶望が映っていた。

雅臣先輩の表情がふいに陰る理由、それは彼の心に巣食う罪がそうさせていたんだと、ようやく知った。