恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「余計に傷が深くなるだけじゃないですか……」
「っ……すま、ない……本当に」
景臣先輩は傷ついたような顔をして、すぐに項垂れるように俯いてしまう。
それでももう、一度口から飛び出した想いは、塞き止められていたダムが決壊したみたいに止められなかった。
「いまさら本当の雅臣先輩じゃないなんて言われてもっ、私は──っ」
どちらの先輩に恋をしていたんだろう。
どちらの先輩に失恋したのだろう。
私は誰が好きだったんだろう。
身の内に溢れる悲しみと苦しみが、底なしにあふれ出る。
きっとどちらも大切な存在だったから、うやむやになんて、してほしくなかったんだ。
「わけがわからないっ」
どうして、最初に話してくれなかったのだろう。
雅臣先輩と過ごした時間も、景臣先輩と過ごした時間も、私にとっては大切なものだ。
だから、ずっと目の前の彼を雅臣先輩だと勘違いして、他人の人生を歩む景臣先輩の苦悩に気づいてあげられなかった事が申し訳なくて、胸が痛い。
私のせいで、君は自由を失ったも同じじゃないか。
お門違いだとわかっているけれど、罪悪感に胸が締め付けられて、その憤りを君にぶつけてしまっている。
そんな自分に、なおさら腹が立った。