恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「……清奈ちゃんの笑顔が曇ってる事と、関係ある?」
「──っ、どうしよう。もしかしたら景臣先輩は……もう部活に来ないかもしれない」
「え……? そんな、どうして!」
「私の、せいだ……っ」
紫ちゃんの手を縋るように握って、「どうしよう」と何度も何度も繰り返し呟き、取り乱す。
私の居場所を守るために、嘘をついていた景臣先輩の事だ。
あんな別れ方をしたら、景臣先輩は思うはず。
自分のせいで私が部活来ないかもしれないって、私から古典研究部っていう居場所を奪ってはいけないって。
きっと雅臣先輩は、私の前から姿を消そうとしているのだ。
「とにかく、お昼に部活のみんなで話し合おう」
「紫ちゃん、でも……」
私はみんなに、何を話せばいいのだろう。
勝手に彼の秘密を口にする事も、答えの出ない私の中にある想いを口にする事も、頭がこんがらがって説明できる気がしないのだ。
「でも、じゃない! ひとりで悩んでても、答えは見つからないよ!」
彼女がこんなに強気に出るのは、初めての事だった。
私のために、紫ちゃんは強く在ろうとしてくれたのかもしれない。
そう思ったらやっぱり涙が出てきて、「うん、ごめんね」と泣きながら謝った。
「大丈夫、みんながいるからね」
「っ……うん、ありがとう」
私の涙を鞄から取り出したハンカチで拭ってくれる紫ちゃん。
今、彼女がそばにいてくれてよかった。
ひとりでいたらずっと悩んで、何も出来ないままだったと思うから。