恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
昼休み、いつものように古典研究部にやってきた。
今日は特別に、小町先生もここでご飯を食べてくれている。紫ちゃんが部の問題だからと、呼んできてくれたのだ。
でも、この部の部長である景臣先輩の姿はない。
扉を開けて彼の姿を見ると、いつもホッとした。彼がいるだけで、みんなも笑顔になった。
なのに今は、長机に集まって顔を付き合わせながら、お葬式にでも来たかのように何も、誰も、話さない。
というより、みんな何から話し合えばいいのかわからない様子で、部室は静まり返っていた。
しばらくして、とうとう痺れを切らしたのか、業吉先輩は「あぁーっ」と声を上げて頭をガシガシと掻き出す。
「清奈、なにがあったんだよ!」
向かいの席に座る業吉先輩が身を取り出すように尋ねてきて、いよいよ話さなければいけないのだと、私は気が重くなった。
まだ、自分の気持ちに整理ができていない。
私がどちらの彼を好きなのか、これからどうしたいのか。
景臣先輩に自分の意思で生きてないなんて言いながら、自分の意思が見えていないのは私の方だ。
「でも……いつまでも逃げてられないもんね……」
そう呟いた私に、業吉先輩は「清奈」と名前を呼んだ。
私は知らず知らずのうちに俯いていた顔を上げて、業吉先輩を見つめる。