恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「雅臣……? 景臣くんの事を言ってるの?」
小町先生には本名を名乗っていたんだろう。
目を丸くして、不思議そうに首を傾げている。
先生なんだから名簿や緊急連絡先の届出で必然とバレてしまうだろうし、当然の話だ。
「かげ、おみ?」
紫ちゃんは不思議な顔で、小町先生を見る。
みんなの戸惑うような空気が肌に伝わってきて、私は真実を告げるためにひとつ深呼吸をする。
そして心を決めた私は、静かに話し始めた。
「……私達が一緒にいた先輩は、雅臣先輩じゃないです」
「え?」
驚く紫ちゃんに、言葉を失っている業吉先輩。
小町先生は何の話だろうと不思議な顔をしていた。
……何から話せばいいだろう。
私は悩んだ末、中学生だった2年前、まだ恋の花がつぼみだった頃の話からする事にした。
誰かに恋の話をするのは恥ずかしかったけれど、ここにいるみんなは私の話を笑ったりバカにしたりしない。
だから自分の想いも含めて包み隠さず、全てを話す事に決めた。
「だから、今まで会っていた先輩は雅臣先輩の双子の兄、景臣先輩なんです」
話している間、みんなは途中で茶々を入れる事なく、静かに最後まで聞いてくれていた。
話し終えると、彼が本当は双子の兄で、名前まで偽っていたというあまりにも現実離れした話に、みんなは困惑している様子だった。