恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「生半可な嘘はボロがでますし、返って相手を傷つける。だから、完璧に嘘をついて清奈ちゃんの居場所で在り続けようとしたのかな……と」
「雅臣──景臣先輩の気持ちはわかるけどよ、清奈の気持ちはどうなんだよ」
気遣うような視線を送ってくる業吉先輩に、私は痛む胸に手を当てて目を伏せる。
「私は……よく、自分の気持ちがわからないんです」
何が、こんなにも胸を苦しくさせるのか。
誰を想って、こんなにも泣きたくなるのか。
私はまだ、胸の中で放散したいくつもの想いをひとつの答えにまとめる事ができないでいる。
「雅臣先輩の事も、景臣先輩のことも……大切です。だけど、私が好きになったのは、どっちの先輩なんでしょう」
こんな事、聞いたってしょうがない。
だって、私の心の中にしか答えはないんだから。
でも、誰かに聞いて欲しかった。
ひとりで抱えていた秘密を打ち明けた時、すごく気が楽になったから。
きっと、みんなに聞いてもらえれば、少しはこの胸の奥にある熱い想いの正体もわかる気がしたのだ。
「はじめに恋をしたのは、雅臣先輩です」
彷徨っていた私に、居場所をくれたのは雅臣先輩だった。
「けど、今心を占めるのは……景臣先輩にかけてもらった言葉、優しく触れてくれた手で……っ」
話しながら、わけもわからず涙が溢れてくる。
私はしゃくりあげながら、彼への想いを語る。
言葉にする事で、少しずつ散り散りになっていた想いがひとつになっていくのを感じていた。
ゆっくりと、でも確実に、明確になっていく。
そう、その想いの行方も──。
「思い出してしまうんです、あの人がくれた優しさ全部を……っ」
どうしてこんなにも、会いたいと思うのだろう。
ほかの誰でもなく、──景臣先輩に。
「辛い時にそばにいてくれたのも、欲しい言葉をくれたのも、景臣先輩なんです……!」
「清奈さん……」
小町先生が私の肩を優しく引き寄せてくれる。
あやすように、何度も背中をトントンと撫でてくれた。
それに、荒ぶっていた気持ちが落ち着いてくる。