恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「弟さんの記憶障害が進行してしまったらしくて、地方の脳外科で有名な大きな病院に入院するんですって」
「雅臣先輩の記憶障害が……!?」
「私も休職していたから、景臣くんの転校の事を今日まで知らなかったの」
そんな……雅臣先輩も景臣先輩も大丈夫なのかな。
心の底から這い上がってくる不安に、動悸が激しくなる。
私にとって大切なふたりが、辛い目にあっているというのに、彼がどこにいるのかもわからない。
ましてや転校する事すら話してもらえないなんて、いかに自分が守られてばかりだったのかを思い知った。
「弟さんは念のため、病院の近くの高校に転校するみたい。景臣くんは弟さんについて行くんですって」
景臣先輩がいなくなってしまう。
あまりのショックに目眩がした私は、その場でふらついてしまった。
「清奈!」
後ろに倒れそうになる私の体は、業吉先輩が支えてくれる。
自分の力で姿勢を保てないほど、心が疲弊していた。