恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。


「あのね、雅臣先輩」


しんみりした空気を吹き飛ばすように明るい声で話しかければ、雅臣先輩はあの頃より少しだけ大人びた笑顔で「うん?」と小首を傾げる。


「今は、古典が大好きになりましたよ」

「……え?」


なんで、古典の話? という彼の疑問が伝わってくるようだった。

それにクスリと笑いながら、再会したら伝えようと思っていた言葉を全て伝える事にした。

中学生の頃みたいに、放課後の部室でした、たわいもない談笑のような口ぶりで。


「居場所をくれて、ありがとうございます」

「君……やっぱり、まさか……」


雅臣先輩はみるみると目を見開いて、どこか確信を秘めた瞳で私を見つめる。

それに構わず、私はなぁなぁになっていた初恋への区切りを付けようと告げる。


「あなたが好きでした、雅臣先輩」

「っ──そうか、俺が探してたのは……君だったんだね」


雅臣先輩はハッとしたような顔をして、瞳からいくつも雫を零す。

私はその涙を拭おうとした。

けれど、その役目は私じゃない。今、君の心を占める誰かの役目だ。

そう思った私は手を引っこめると、泣き笑いを浮かべる。

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