恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。
「そうしたら、景臣は必死になって君の居場所を聞いてきて、兄にとって君は大切な存在なんだと思った」
景臣先輩にとっても……?
でもそれは、罪悪感があるからで──。
自信なさげに目を伏せる私の耳に、「君にとって兄は、どういう存在?」という雅臣先輩の声が届く。
「…………」
私にとって、景臣先輩は大切で、大好きで、愛しい人だ。
生まれて初めて、泣きたくなるくらい人を好きになった。
全部全部、景臣先輩が教えてくれた感情だ。
「もし君にとっても大切な存在なら、兄を救ってほしい。兄は俺のせいで、自分を犠牲にして生きてきたから」
それはきっと、自分を庇った雅臣先輩から、私の記憶を奪ってしまったと思っているからだ。
でも、私も雅臣先輩も後悔なんてしていない。悲観してもいないのだ。
あの事故がなかったらなんて、考えられない。
私達はその過去の先に、生きているのだから。