恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。


カラカラカラカラと、スライド式の扉を開けると、茜より淡い山吹色の日の光が目を焼いた。


「っ……」


その眩しさに目を細めると、こちらを振り返る濡れ羽色の髪と瞳を持った男の子。

忘れもしない、君の姿。記憶の中で『清奈』と呼んで微笑む先輩の姿と目の前の彼の姿が重なる。


「雅臣……先輩?」


目が合って、ためらいがちに尋ねると彼はわずかな驚きをその表情に映した。


私がここにいることに、驚いているのかな。
ねぇ雅臣先輩、あなたに会いに来たんですよ。

──雅臣先輩のことが、好きだから。

深い息をついて、意を決したように先輩を見据える。
高鳴る心臓に苦しくなりながら、募った君への思いを唇に乗せた。


「つくばねの 峰より落つる 男女川 
恋ぞつもりて 淵となりぬる」


あの日、雅臣先輩が和歌で告白してくれた時のように。

私も同じ和歌で、告白の返事をした。

彼なら私の気持ちに気づいてくれる、そう思って。

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