恋ぞつもりて、やがて愛に変わるまで。


「──気づいたら、清奈に恋をしていた」

「っ……ありがとうございます、景臣先輩」

「お前が好きだよ、清奈」

「嬉しいです、心から……」


その言葉が聞けて、良かった。

君から逃げなくて良かった。

最後まで君を追いかけてよかった。

嬉しくて頬を伝っていく涙は、今まで流したどの涙より温かかった。


「俺を見て、俺を好きになってほしいって……ずっと思ってた」

「もうとっくに、好きでしたよ」

「そうか……ははっ、嬉しいよ」


そう言って笑った景臣先輩の顔は、淡く優しい月のよう。

初めて、曇りのない景臣先輩の笑顔を見た気がした。


「清奈、俺はお前が好きだけど、雅臣が心配だから……」

「行くんですね」


景臣先輩は雅臣先輩と一緒に、脳外科で有名な病院のある地方の学校へと行ってしまう。

それは寂しいけれど、雅臣先輩を支えられるのは兄弟である景臣先輩だけだから。


「あいつをほって置けないんだ」

「……はい、わかってます」


見つめ合う私たちの間に、風が吹き抜ける。

その時間が、永遠にも感じた。

時が止まればいいのにと思うほど、君が好きだ。


< 216 / 226 >

この作品をシェア

pagetop